会見と報告書

昨日記者会見と公式HPに報告書が載りました。劇団の会見はニュースで報じられていた部分のみかいつまんで把握しました、16時は仕事中でしたので。遺族側弁護士の会見もニュースで把握し、報告書は全て目を通しました。さて、これから書くのは私が受けた印象であり、個人の意見であり、劇団を無駄に擁護する意図もなければ故人をどうこうという意図もありません。あくまで私の考えです。

 

1.劇団の会見について

まず、劇団の会見内容ですが、過労は認めるがパワハラは認めない。でしょうね、といったところです。既定路線。そうなるだろうと予想していたので発表内容に特段驚きはありませんでした。だからといってAさんやトップさんなどいじめやパワハラがなかったんだ、良かったとはなりませんでしたが。まあ実際の喋り方、しゃべる内容などはもう少しどうにかしたら良かったのにとは思いますが。理事長が無駄ににやけ顔なのもなんとも損。客観的な証拠がなくパワハラは認められないが、本人にはそう聞こえていたかもしれない、と謝罪する一言があれば心象は違ったかもしれません。

2.報告書について

あの激長報告書を全て読みました。第一印象としては会見よりマシ、です。法律事務所と弁護士の名前が公開されているので、内容に一定の担保はあるのではと思います。あれが虚偽とはいかないまでも割と嘘とバレることにより生じる不利益よりも劇団よりの報告をすることで彼らが受ける利益が多いのなら別ですが。報告書内に記された遺族側との食い違いはアイロンが故意である、上級生4人から会議室で責め立てられたという部分でしょうか。証拠不十分のため事実認定は困難だったと。後半には上級生からの叱責について記載がありましたが、そこら辺に関して人格否定をするものではなかった、叱責は社会通念上の範囲を超えないものだったとする根拠はやや弱いかなと感じました。医療者としては、火傷がみんなよくあるレベルであったとしても記録は残すべきだと思います。故人に限らず全員、小さな傷だとしてもあるなら記録をとるべきです。カルテは重要な証拠になりえます。黒塗り部分の診療録に何が書かれていたのかはわかりませんが、報告全体の内容に影響を与えるものではなかったとの認識のようです。余談ですが、自死に関しては、自殺者の多くが精神疾患をかかえており、その30%がうつ病という統計が2000年に出ています。そしてさらに余談ですが、ヒアリングには弁護士だけでなく精神科医などもいても良かったのかなとヒアリング素人は考えます。

3.SNSでの反応

まあやはりというべきかXでは大炎上。パワハラはあったのに認めないなんてひどい的な意見がそこそこいる。まああの会見が褒められたものではないのはわかりますが、会見を見る側はなぜ最初からパワハラがあったと決めつけているのか。某週刊誌が報じたから事実だ!はあまりにもナンセンスすぎやしないかと思います。遺族側が主張しているから事実だ!も遺族側が信頼できないとか嘘をついていると言いたいわけではなく、あれはあくまでも遺族側の主張であるわけで証拠があるといいつつもそれが司法の場で判定されたわけではありません。劇団の会見を見る側が最初から決めつけ、バイアスをかけ、ともすれば叩いてやろうと悪意に満ちた目で見るわけです。そりゃあ自分がパワハラがあったと決めつけているのだからないと言われれば納得がいかないでしょう。事実は故人が亡くなったこと、アイロンはあたった、過重労働はあった、それだけです。故人の遺書や日記にどうパワハラされてどう思って死を選ぶに至ったのかが記されていない限り真実は故人しかわからないし、アイロンが故意か否かもAさんしか真実を知りません。現状我々に客観的な証拠が示されていないためどこにも真実なんてないんですよね。白黒つけるにはやはり法廷しかないと思います。(証拠はあるけど法廷で争いたくないというのは若干デジャブを感じますがきっとそれは配慮であり譲歩なんでしょう。)

そしてこれだけことが大きくなれば当然叩ければなんでもいいような外野が首を突っ込んでくる。そんなに正義感を振りかざして正しいことをいってる風な自分に酔いたいんでしょうか。宝塚に限らず、SNS上に正義感をはき違えてるようなのが最近ほんとに多い。(私人逮捕とか意味わからない。)

ひどいといえば黒塗り報告書と誤解を与える見出しがつけられていたニュース。黒塗りされていたのは故人が伝えた休演理由や診療録などプライバシーに関するものです。叩きたい人間は見出ししか読まないし、なんなら見出しすら正確に読み取りません。まさにメディアの悪いところ。ヒアリング拒否した4人こそ犯人だと叩くのも気持ちはわかりますが、どうしても精神的に話すのが苦痛だという場合も考えられるので安易だなとさえ思います。Aさんの印象を良くしようとしている、トップ娘役に内定しているから守られているなど憶測で叩いてる人。さすがにその思考は気持ち悪すぎると思います。

4.パワハラの定義

報告書内では基準に照らし合わせると上司からの叱責の負担は中程度とされていましたが、これをパワハラととるか否かが問題なのかなとうっすら思います。今の時代、いじめもハラスメントもされた方がいじめと言えばいじめになります。そういう意味ではパワハラととれるのかもしれません。ただ、誰が聞いてもアウトな場合と人によっては平気な場合、グレーゾーンがあると思っていて、グレーゾーンは判定が難しいものと思います。そして誰が言うのか、ということも大いに関係すると思っていて、特別なんとも思っていない人と苦手意識がある人に同じように強く叱責されたときに感じるストレスは違うものと思います。録音やLINE画面などで証拠があれば別ですが、パワハラがあったと立証するのは難しい。今回も明らかにパワハラと判断するには証拠不十分と判断されたという認識です。

5.今後の宝塚

会見、報告書を経て、トップやAさんが何もなかった、安心して公演再開ですね!とは正直なりません。劇団は会見、報告書で鎮火できるつもりだったのかはわかりませんが、少なくともすぐに宙東京公演開始にこぎつける状態ではないように思います。では東京公演を中止にすべきかというと、退団者もいて、公演に関わるスタッフなどの生活もあり、安易に中止すべきと言えないなとも思います。

お稽古時間に関しても、安易に公式稽古を増やして退館時間を早くすればいいという問題ではない。自主稽古をどこまで労働時間ととるか難しいところではあり、医療業界とも通じる部分があると個人的に思っています。1年の公演数が減ることで休養期間が増え、お稽古期間に余裕が出て、自主稽古が本来の意味の自主稽古になることが必要だと思います。その上で自主稽古やそのほかレッスンなどの時間を自分できちんと健康を考えて動けるように教育、内部のシステムを構築する必要性もあります。生徒さんたちの仕事は舞台に出ることであり、舞台の演出の補佐や小道具係ではありません。そのあたりを生徒に押しつけてコストカット♪とするのではなく、専用の人にやらせてほしい。医療でもそうです。医者には医者にしかできない仕事を、それ以外は秘書などで分業する。生徒にしかできない、舞台で輝くことに専念できる環境作りは必要です。

そして上級生と下級生の関係性。一歩間違えれば命に関わる舞台機構もあったり、スターシステムの関係上、下級生が上級生を抜くことなど日常茶飯事。その中で一定の上下関係は保たれていた方が色々とスムーズですが、パワハラの温床となる危険性をはらんでいることは間違いありません。行き過ぎた指導はパワハラになりますが、自分は平気でも相手は違うということはありえます。本当に相手を思った言葉なら通じるのか、そもそもハラスメントととられる可能性を持った言葉をかけるべきでないのか、相手と信頼関係がつくれていないから少し強めに怒ったことがハラスメントととられるのか。研修ももちろんですが、結局お互いにきちんと話すことって大事なんだと思います。なんだか精神論みたいで嫌ですが。

 

長々とまとまってないことを書いてきましたが、最後に。非を認めた部分や故意であろうとなかろうと怪我を負わせたことについて遺族の方に謝罪し、きちんと向き合ってほしいと思います。すでに大炎上でこじれたこの問題をこれ以上こじらせることはしないでほしい。これは私のエゴでしかないですが、110周年をすっきり楽しくとはいかないまでも普通に110周年おめでとうと思わせてほしい。今後生徒の心と身体がきちんと守られることを願って。